贈与が成立するためには
目次
「贈与」をしたいのですが、どのようにすればよいでしょうか?
といったご相談を頂くことがよくあります。
「贈与」というのは、「タダでものをあげること」ということになりますが、法律上は民法上の贈与契約のことをいいます。
「契約」というのは、お互いに納得して成立します。
したがって、自分の持っているものを「タダであげます」といい、もらう人が「ではいただきます」といって成立するため、贈与があったことをどちらかが知らないということはあり得ません。
例えば、幼児に預金をあげるといっても、幼児はもらったことを理解できないため、贈与が成立したとはいえません。
また、親が子供には告げずに子供名義の預金に入金していたとしても、子供がもらったことを理解しており、自由に使えるような状況にないと贈与が成立しているとはいえません。
これはあげる側でも同じで、痴呆がはじまり正しい判断ができない場合や、成年後見制度により後見人がついている場合は、贈与自体がなかったこととされてしまいます。
贈与は、あげる側がしっかりとした判断のもとに行い、もらう側がもらったことを理解しているということが成立の条件となります。
次に、贈与の際に気を付けることをいくつか挙げさせて頂きます。
贈与契約書を作成することが重要です!
まず、あげる側ともらう側の双方が納得していることを確認するため、贈与をする際は贈与契約書を作成することが重要となります。
あげる人ともらう人がそれぞれ自筆でサインし押印をしておけば、贈与の事実の証拠となります。
贈与契約書に公証役場で確定日付をもらうと贈与の時期についてもより確実な証拠となります。
なお、贈与契約書を作成しない贈与はあげる人の意思で取り消すことができるとされており、もらう人からすると大変不安定な状態ですので、これを避ける意味でも贈与契約書を作成することは重要となります。
幼児に贈与をする場合は親権者が代理することになります。
もらう人が未成年の場合は、親権者が代理して法律行為をします。したがって、もらったことを理解できない幼児であっても親が親権者として代理に贈与契約を結び、もらったものを預っておくことで贈与は成立します。
預貯金の贈与の場合は、通帳、印鑑の管理にご注意を!
預貯金の贈与の場合は、贈与契約書を作成することはもちろんですが、それ以外にももらった人が預貯金を管理していない場合は、贈与自体がなかったこととされ、名義預金として取り扱われる場合があります。
名義預金というのは、本人名義の預金を相続税対策などのために他人名義預金としておいた場合でも、法律上や税金計算上、本人名義の預金として取り扱われるものをいいます。
名義預金とされた場合は、相続税の計算上は相続財産として取り扱われたり、遺産分割の対象となる預金として取り扱われたりして、せっかく贈与をしたいと思っていたのに、その気持ちが無駄になってしまうことになります。
名義預金とされることを避けるために、預貯金を贈与する場合は、以下のような点に注意してください。
・あげる人が自分の預貯金口座から現金を引き出した上で、もらう人の預貯金口座へ振り込む
・もらう人又はその親権者が通帳や印鑑を管理し、届出印はあげる人と同じものを使わない(もらう人又はその親権者が預貯金を自由に使える状態にしておく)
不動産や株式の贈与の場合は、贈与のつど名義変更を行いましょう!
不動産や株式の引き渡しが行われていることを確認するため、不動産登記名義の変更や株式名義書き換え手続きなどを贈与の都度きちんと行っておくことが重要となります。
贈与税の申告が必要な場合は、必ず贈与税の申告を行いましょう!
もらう人が1年間でもらう財産の価額の合計額が110万円を超える場合は、贈与税を申告・納税する必要があります。
この場合は、贈与税の申告は贈与の証拠の一つとなりますので、該当する場合は必ず贈与税の申告を行いましょう。
また、相続時精算課税贈与を選択している場合は、金額にかかわりなく贈与税申告をする必要がありますので、必ず贈与税の申告を行いましょう。
これ以外にも、贈与には、贈与税や相続などの問題がつきまといますので、贈与を行う前には、司法書士などの法律の専門家や相続税に詳しい税理士に相談してから行うことをおすすめ致します。
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