譲渡所得税が発生する場合の取得費加算の適用について
目次
相続財産に係る譲渡所得税とは
相続によって土地や建物を取得した際、売却を考える方は多いのではないでしょうか。
たとえば、相続した土地が遠方で管理しにくいのであれば売却も視野に入ります。
しかし、売却する場合は、「譲渡所得税」を課税される可能性に注意しなければなりません。
譲渡所得税とは、財産を売却することで発生する所得に対して課税される税金です。
といっても、譲渡所得税は必ず発生するわけではなく、財産を手にしたときの金額(取得費)と売却したときの金額差に利益(譲渡所得)が生じた場合にのみ発生します。
たとえば、Aという土地を1000万円で購入していて、その後1500万円で売却したのであれば、500万円が譲渡所得として課税される仕組みです。
ここで相続特有の問題が出てきます。
相続によってA土地を得た方は、いわば0円で土地を手にしている状態です。
一見すると、譲渡所得は1500万円になるように見えます。
しかしこの場合は、亡くなった方がA土地を取得する際に支払った金額が、相続財産にかかる取得費となるため、まったく同じ計算となり譲渡所得は500万円になります。
取得費加算の特例とは
相続によって土地や建物を取得した場合、取得費加算の特例を利用できる場合があります。
取得加算の特例とは、相続を知った日の翌日から3年10ヶ月以内に売却した相続財産があった場合、相続税の一部を取得費に加算し、譲渡所得税を抑えられるという制度です。
課税所得税の根拠となる譲渡所得の計算式は、
「譲渡所得=譲渡代金-(取得費+譲渡費用)」になります。
譲渡費用とは、売却時の仲介手数料や印紙税、更地にするためにかかった費用などです。
ここに取得費加算の特例を適用させると、相続税の一部が取得費に加算されるため、
「譲渡所得=譲渡代金-((取得費+取得加算費)+譲渡費用)」になります。
そして譲渡所得税は、最終的に以下の計算式によって算出されます。
「譲渡所得税=譲渡所得×税率(取得税・住民税)」
なお、譲渡所得に対する税率は分離課税となっているため、対象となる不動産の用途や所有期間などによっても税率が異なる仕組みになります。
取得費加算の特例を適用するための条件とは
取得加算費の特例を適用するためには、以下3つの条件を満たさなければなりません。
①相続や遺贈により財産を取得した者であること
②その財産を取得した人に相続税が課税されていること
③その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
(引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)
以上の条件を満たしている場合、必要書類を添えて確定申告をすれば特例が適用されます。
【必要書類】
・相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
・譲渡所得の内訳書
取得費加算の特例は、条件さえ満たせば自動的に適用されるわけではありません。
確定申告が必須であるため、利用を検討している方は税理士への相談をおすすめします。
取得費加算の特例の計算方法
取得費加算の特例の計算式は、以下のとおりとなっています。
(引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3267.htm)
たとえば、以下のケースでは、取得費に加算できる金額は250万になります。
相続税額:500万
取得した財産の評価額:1億
譲渡した財産の相続税評価額:5000万
計算式「500万×(5000万÷1億)=250万」
譲渡所得税の節税事例
以下では、譲渡所得税の節税事例についてご紹介します。
事例①相続した土地を売却した
Aさんは、父親から相続した不動産を売却することにしました。
この不動産は、父親が生前に3000万円で購入していたもので、2年ほど前に相続税申告も済ませています。その際の相続税の負担が大きかったため、Aさんは売却時に取得費加算の特例を適用させることを検討し、税理士に相談しました。売却時には、土地を更地にするための費用や仲介手数料などで200万円の費用がかかりました。
・土地の売却価格:6000万円
・土地の取得費:3000万円
・取得加算費:1500万円
・譲渡費用:200万円
取得費加算の特例を適用し、1,500万円の相続税を取得費に加算することができました。
これにより取得費は4,500万円となり、課税譲渡所得は次のように計算されます。
「6000万円-(3000万円+1500万円)-200万円=1300万円」
取得費加算の特例を適用したことで、Aさんは課税譲渡所得を大幅に軽減できました。
課税譲渡所得が軽減されれば、最終的な税額も大幅に抑えることができます。
Aさんは余計な税金を納めなくて済みました。
取得費加算の特例を利用する際の注意点
取得費加算の特例を利用する際は、以下2つの点に注意してください。
①遺産分割協議を終えていること
②節税に有利な不動産を適用させること
①遺産分割協議を終えていること
遺産分割協議は、3年10ヶ月という期間内に終えている必要があります。
遺産分割協議とは、相続人が相続財産の分配などについて話し合うことです。
特例の利用を検討しているのであれば、必ず期限内に終えられるよう調整しましょう。
②節税に有利な不動産を適用させること
取得費加算の特例は、すべての不動産に適用させられるわけではありません。
複数の不動産がある場合は、取得費加算額より譲渡所得のほうが大きい、または等しい不動産に大きな節税効果が期待されます。
なお、売却時に損をする不動産は、取得費加算による節税効果には期待できません。
取得費加算の特例は、節税に有利な不動産に適用させるよう注意してください。
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取得費加算の特例を利用すれば、相続財産の売却に伴う譲渡所得税の負担を軽減できる場合があります。
ただし、相続開始の翌日から売却までの期間が3年10ヶ月以内であることなど、いくつかの条件を満たさなければなりません。また、不動産の売却においては、取得費加算の特例の他にも特別控除が受けられる場合があります。
よって、相続した不動産の売却を検討している方は税理士に相談し、特別控除との比較、その結果、税負担がどの程度軽減されるのかなどについて、アドバイスしてもらうことをおすすめします。
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